普通ブロック塀は、土留めとして認められておらず、建築基準法で認められているのは、土壌の横圧に耐えられ、斜面の崩壊を防ぐ壁状の構造物、擁壁工事(ようへき工事)です。
土壌の横圧を受け止める強固で安全な擁壁工事(ようへき工事)は、グリーンパトロールにお任せください。
◆擁壁工事(ようへき工事)・型枠ブロック塀 施工事例 ~神奈川県藤沢市 Y様邸
神奈川県藤沢市にお住まいのY様から、隣地境界のブロック塀のご相談をいただきました。
Y様のお宅の建物は、道路から1メートル50センチほど高い場所に建っています。地形的にこの辺りはもともと真平らではなく、昔、海岸で砂丘だった場所を住宅地として切り開いたため、住宅が建っている場所と道路に高低差があるのです。
問題のブロック塀を見てみると、土圧のためにブロック塀が押されて、10センチほど斜めに膨らんで、隣の敷地に入り込んでいました。
また、敷地の境界線も間違って越境しているらしく、取り除いて正しい境界線で新しくつくり直すことになりました。Y様にご提案した図面はこちらです。
建築基準法で土留めとして認められているのは、普通ブロック塀ではなく、擁壁工事(ようへき工事)です。斜面の崩壊を防ぐために設計・構築される壁状の構造物、擁壁工事(ようへき工事)であれば、土壌の横圧や雨水などの水圧に長期間耐えられるのです。
擁壁工事(ようへき工事)の工法は色々ありますが、今回は「型枠ブロック」を用いて造ることにしました。実はY様のお隣の土地の所有者様から、工事の際、敷地に入らないよう言われており、隣の敷地に一切出入りせずに造れるのは、型枠ブロックを用いての工法だったからです。
ちなみに、役所に提出する場合は以下のような図面が必要です。
2メートル以上の擁壁工事(ようへき工事)をつくる場合、このような図面を役所に提出して建築確認申請をする必要があります。業者によっては建築基準法を理解していなかったり、故意に図面を作成する手間を省いて工事をするところもあります。
建築確認申請をせずに造った塀は、後に役所から指摘を受け、違反建築物とみなされてしまう場合があります。そのようなことになると、後々家を建て直す際に役所から建築許可がおりなくなる・・という事態に発展する可能性があるのです。ですので、業者を選ぶ際は、金額だけでなく、きちんとした所に依頼することが大切です。
工事が始まりました。新しく造るブロック塀は、塀の高さと同じだけの幅の基礎(ベース)を土の下につくります。そうすることで、倒れない強固な擁壁工事(ようへき工事)をつくることができます。
基礎を造るため、ブロック塀でせき止めている土をどかす必要があるのですが、庭の部分になっている土のうえには庭木がたくさん植わっていました。そこで、これらの庭木を伐採して取り除きました。
できれば切らずに移植したかったのですが、Y様邸の庭木は、移植するには「根回し」が必要な樹齢で、根回しには普通2~3年、最低でも1年の期間が必要です。その時間をかけて移植することはできなかったので、切らざるをえませんでした。
庭木を取り除いたら、パワーショベルで土をどかす作業を行います。お隣から敷地に入らないよう忠告されていたので、土を一旦別の場所に移動させ、また戻すという工程で行わなければなりませんでした。
そこで問題になったのは「どこから土を運び出すか?」ということでした。土を運び出すにはダンプカーが必要です。普通に考えると、Y様のお宅の門から敷地にダンプカーを入れ、ブロック塀横の土を運び出す・・というものですが、Y様邸の門には立派な門かぶりのマツノキが植わっており、その下をダンプカーが通るのはスペース的に厳しいものがありました。
無理して通るとダンプカーがマツノキを痛める可能性があります。そのため門からダンプカーを入れるのではなく、外の道路側から玉石積みの塀を一旦取り除いて、そこから土を出し、工事が終わったら、玉石積みの塀を復元するという方法をとることにしました。
当初、Y様は知り合いの不動産屋さんから紹介された業者さんに相談されていたそうですが、そこの会社が、ダンプカーを入れるためにそのマツノキを伐採すると言ってきたそうです。しかも、お隣の敷地に入らず工事することも「そんなのは無理」と言い、玉石積みの塀側から工事する方法にも「玉石を元の通り復元することなんてできない!」と言ってきたそうで、Y様は強い不信感を抱かれたそうです。
そこで、以前雨漏りの屋根修理をさせていただいた我が社に「グリーンパトロールさんならできるんじゃないの?」とご相談いただいた・・という経緯がありました。
確かに一旦壊した玉石積みの塀を元の通り戻すのは大変です。壊してしまって新しいものを造る方法もあるでしょうが、私は「今あるものを大事に再利用したい」という主義ですので、全ての玉石に表裏と元あった位置がわかるよう番号をうって、元の通り復元する方法をとることにしました。
土をパワーショベルで掘り、ダンプカーに乗せて、一旦別の場所に移動させました。土を取り除くと、ブロックに土の跡が残っていました。この高さまで土があったのです。
次は、ブロック塀を壊して取り除いていきます。
ブロック塀の撤去が終わったら、擁壁工事(ようへき工事)の基礎(ベース)づくりを行うため、捨てコンクリートを打ちます。捨てコンクリートとは、基礎の底面を平らにし、構造体の位置を決めるために敷くコンクリートです。捨てコンクリートが出来たら、基礎の鉄筋を組み、コンクリートを流し込みます。
普通、コンクリートを搬入する作業は、一輪車などを使用して人力で行うのですが、今回は工期短縮のために圧送車(コンクリートポンプ車)を使用してコンクリート打設を行いました。
コンクリートポンプ車から圧送されたコンクリートは、バイブレーター(振動機)を用いて締め固めます。バイブレーターを色んな箇所に差し込んで振動を与えると、コンクリート内の空気が抜け、隅々まで均一にコンクリートが充填され、耐久性に優れたコンクリートになります。
業者の中にはこの作業を省いて手抜き工事をする業者がいますが、この作業を省くと、コンクートの中や端に空洞が出来て、弱いコンクリートになるのです。擁壁工事(ようへき工事)など厚みのあるコンクリートを造る際は必要な作業です。
基礎ができたら、型枠ブロックで擁壁工事(ようへき工事)をつくります。型枠ブロック塀は擁壁工事(ようへき工事)の一種で、ブロック自身が型枠の役目をして、相当量の鉄筋とコンクリートを充填することができる、強度に優れた擁壁工事(ようへき工事)なのです。
また、普通の擁壁工事(ようへき工事)を造る場合、隣の敷地に出入りして、型枠を造ったり外したりしないといけないのですが、型枠ブロックだとその必要がなく、隣地に入らず工事が行えます。
ただ実際に造ってみると、ブロックの目地仕上げなどの作業を、隣の敷地に入らず行うのはとても大変なことでした。隣の敷地にゴミが入ったり車を傷つけないよう、工事用の仮設フェンスを取り付け、注意しながら作業を行いました。
擁壁工事(ようへき工事)が完成したら、別の場所に移動させていた土を基礎の上に戻します。塀の高さと同じだけの幅の基礎の上に土がのるので、しっかりして倒れない、安全な擁壁工事(ようへき工事)になります。
次に、バラバラにしていた玉石を元通りに復元します。玉石一つ一つに番号を打っているので、番号順に積み直して復元します。玉石積みの塀が元通りに完成しました!
右側の低いブロック塀がお隣の塀で、土の部分が越境していたところです。正しい位置にセットバックしました。
塀に所々空いている穴は、水抜き穴で、土にしみ込んだ雨水を逃がす役割をします。この水抜き穴が無いと、土にしみ込んだ雨水が流れ出ず、塀に過剰な土圧がかかります。もともとあった塀が倒れてきたのはこの水抜き穴が無かったことも理由の一つです。
土圧に強い安全な擁壁工事(ようへき工事)が完成しました。玉石積みの塀もバラバラにしたとは思えないほど完璧に復元できました。
隅の土が少ない部分は、この後、石を移動させたりして庭づくりをした際に出る残土を、ここに埋めてちょうどよくなるよう、スペースを残しているのです。一杯いっぱいまで埋めてしまうと、土を捨てる時に困るからです。今は捨てるのに費用がかかる時代です。無駄が省けるよう、そこまで計算して造っています。
Y様は「強い塀が出来て安心しました。敷地境界も問題なくなったし、長年の悩みが解決しました。」と大変喜んでくださいました。
雨が降ったりすると、土がブロック塀を乗り越えて隣地に流れ込む・・などのお悩みがありましたら、擁壁工事(ようへき工事)に問題があるサインです。グリーンパトロールにご相談ください。住環境アドバイザーの狩谷昌伸が現地に訪問して、無料で調査いたします。